刊本作品

No,108 ナイルの葦

昭和55(1980)年[限定300]
【表現様式】パピルス造本、凸版【函】めおと函
145×113(mm) 頒布価格7,000円

 特筆すべきは刊本作品最長の4年半もの時間を費やしている所である。パピルスはペーパーの語源になった世界最古の紙であり、葦とはまた別の植物である。「紙を母胎とする本というものとはこのご先祖様と切っても切れない因縁がつながっているというわけで、刊本作品ともあるものが一度はこのパピルス造本でお目見えするのは当然の事と言わなくてはならない」というところから制作が始まった。高山でパピルスの栽培から着手され、3ヶ月後に収穫された。昔のままの製法で、パピルスの茎を皮をはぎ、芯の部分を薄く裂き、並列に並べ、その上から垂直に並べたものを布で挟み木槌でたたくというものである。一日に漉けるのが3枚という手間がこの最長記録を生みだした。パピルスの生まれはエジプトなので、そこが舞台となっている。
 武井はこの珍しい作品に対して「美術的な鑑賞価値とか藝術的な綜合価値とか、そういう視野で見るべきものではない。これはパピルスである事だけが造本の目的である。」と遺している。