刊本作品

No,50 独楽が来た

昭和37(1962)年[限定430]
【版画技法】日本伝承木版【函】帙
175×130(mm) 頒布価格1,500円

 現代日本伝承木版を作りたいと思い立って、記念すべき50作品目にできたのがこの「独楽が来た」であった。日本伝承木版とはつまり浮世絵と同じ制作過程であるが、使用する色の数だけ木版を彫らなければならない。この作品では「ぼかし摺」と「光沢(つや)摺」の特殊摺が使用されている。ぼかし摺は色の濃淡がグラデーションになる摺りで、一枚目の山の部分に使用されている。光沢摺は黒の部分に①黒の墨摺り→②鼠の摺り→③上等のつやのある墨を3回重ねる方法を取っている。これは二枚目の空の部分に使用された。彫師も摺り師も最高の職人が担当している。
 「内容のテーマについては独楽が原子力を表現しているものだと解釈している方が何人か居られるようだが、そう思われても一向に差支えない。本は見る人によって変貌する。という私の標語のようにいろいろの角度から鑑賞されていいわけである。然し著者の作意は原子力というようにズバリ限定したものではなくて、もっと広くすべての神秘的なエネルギーというようなものを象徴しているつもりである。これは物理学的なエネルギーに限らず精神的なエネルギーをも含めている。芸術などの生み出されるそれもその中にある。」今の時勢を先見していた武井武雄である。