刊本作品

こだまNo,31 木魂の伝記

昭和32(1957)年[限定300]
【表現様式】寄せ木【函】帙
147×106(mm) 頒布価格1,500円

 戦前に買った湯河原の寄せ木細工がきっかけでこの作品は誕生した。寄せ木は必要な高さの木片を組み合わせて模様を作り、薄く一枚ずつ切り落としていくのだが、寄せ木職人は大概世襲の職人でこの作品が作られた当時でも数が少なかったという。この寄せ木を担当したのが一ノ瀬鶴之助という工歴55年という重鎮である。一見渋い見た目であるが、「木質本来のオリジナルな色感だけを使うのが本筋で、又それでないと飽きのこない渋い美しさというものは得られない」ということから武井のセンスが光っている。この職人がまたすさまじいもので、持病の胃潰瘍で入院したところを抜け出し、午前2、3時まで取組む魂の掛けようであったという。一ノ瀬氏も「寄せ木の仕事も長く続けてきたが、この様な美しい本で表現された事は、始めてで、私も私の仕事に対して誇りを持つ事が出来たと共に後代の人々にも貴重な参考になるもので長く家に伝えて宝にしたい、、と非常に喜んだ返事が来た」という。古来より伝わる素晴らしい伝統を残したい、そんな武井の想いと職人の想いが見事に一つになった作品である。