刊本作品

No,30 誕生譜

昭和32(1957)年[限定300]
【版画技法】エッチング【函】めおと函
147×111(mm) 頒布価格21,700円

 武井は東京美術学校(現東京藝術大学)の西洋画科へ通ったが、研究生の時は油絵の他に版画を選択していた。そこで初めに出会ったのがエッチングの西洋版画である。以降「地上の祭」「宇宙説」と手掛けており、プランは7.8年前からあったものの、刊本作品では初めての事であった。摺りは関野準一郎の門下生で版画家として活躍した若かりし宮下登喜雄氏が担当している。武井は「センスの細かい、むらのない、いいプリントを完逐してくれたので私は満足した」と評価した。材料は箱の内側の紙以外全て特注品という凝りよう。見返しに使用されたマーブルは一番の難所だったと記されている。理由として、当時既に職人が知る限り一人存在しないことから、時間も金額(なんと一冊分紙代を除いて当時の120円!)も想像以上にかけられたことが挙げられる。その当時、懐かしいものとなっていた金縁の覆輪もつけられた。内容は唯の昔話の再話ではつまらないということで、明治時代を意識して文語体で書かれたという。
 武井は仕事に根をつめ、度々胃酸過多という病気を発症しているが、この作品の制作時も発症している。